柳広司著『パンとペンの事件簿』(幻冬舎)を読む。

物語の舞台は大正時代、1910の大逆事件後の話だ。
社会主義運動は「冬の時代」を迎え、社会主義者の堺利彦が「売文社」を経営し、厳しい時期をしのいでいた。
この「売文社」が舞台で、青年の「ぼく」の視点で物語は進む。
堺利彦をはじめ、大杉栄や荒畑寒村など、実在の人物も登場する。
本当は暗くて陰鬱な時代であったはずだが、この小説はときにユーモアを交えて、軽快に進んでゆく。
とても読みやすかった。
言論の自由や個人の尊厳などが少しずつ失われてゆきつつある今、この小説を読む価値はある。
ぜひ多くの人に読んで欲しい。
参考文献にあげられていた、黒岩比佐子著『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)は、家のどこかにあったはず。
探して、今度は丁寧に読み直したいと思う。